自家製ジェノバソースとジェノベーゼ蘊蓄

台風7号の対策と被害
2016-08-17
台風9号の爪痕
2016-08-24

はじめに

ネット上にいくらでもジェノバソースとジェノベーゼパスタのレシピやイングレディエンスがあり、同じような事を今更書いても仕方が無いと思いますので、今回はネットではあまりひとつに纏まっていないトラディショナルなジェノバソースと代替レシピ、通っていたレストランで教えて頂いたTipsなんかを交えて自分の知っているジェノベーゼの蘊蓄を垂れ流してみようと思います。

基本的に伝聞やら書籍の類いからの引用であって、しっかり修行して肌でつかみ取ったようなヒリヒリとした感覚ではないのでご了承を。


トラディションレシピ

marble-mortar-pestle

まずはトラディショナルなジェノバソースの説明から。

イタリアにはDOPと言う伝統料理やトラディションな食物の規格を定義する団体があり、その団体によれば叩いたニンニク、松の実を、すりつぶしたバジル、塩(非精製)、パルミジャーノ・レッジャーノ、ペコリーノ・サルドと掏りあわせてエクストラバージンのオリーブオイルと混ぜる、と定義しているそうです。
wikipediaによればパルミジャーノ・レッジャーノ、ペコリーノ・サルド各50gに対してバジルリーフ10束が正統なバランスとも。

これを下地としてリストランテグレードでは
・松の実はイタリア、もしくはカリフォルニア産の物
・チーズはパルミジャーノ・レッジャーノだけを使い、ペコリーノ・サルドは使わない事も多い
・塩はマルドンのフレーキーを使う
・フードプロセッサーやミキサーは使わず大理石のすり鉢を使う
・オリーブオイルはDOP cetificatedのLigurian Rivieraのエクストラバージンを使う

と言ったところが定番とされているそうです。

ただまぁ、乱暴な言い方をすると日本で言う「たまごかけごはん」みたいなもんでもあるので
例えば烏骨鶏の卵に煮切りした木桶造りの醤油に利尻昆布を浸して~等と、手間とお金を掛けたものは美味しいですが、そういうのはうっとうしいと言えばうっとおしいので手軽に作れる範囲でできるだけ美味しくなる代替レシピを紹介させて頂こうと思います。


代替レシピ

cuisinart

Photo by cuisinart.com

上記のような素材から手に入りやすい素材に置き換える際、思いっきり妥協してもさほど味が落ちない部分と、ある程度拘らないと各段に味に差の出る部分があるのでその解説をします。
水耕栽培サイトですので、バジルは自家製の摘み立てがある前提とします。

オイル

日本で作る場合、塩以外はほぼ普通には手に入りません。
特に、ジェノバソースの味を決める一番重要なオリーブオイルはなかなか面倒です。
エクストラ・バージンのオリーブオイルはそこらのスーパーに売っているように思いますが、日本には食用オイルは酸度が2%未満でなくてはならないと言う基準以外にこれと言った基準はなく、表示名にも規制がありません。
安いものはエクストラ・バージンと表記されていてもバージンどころかシングルエステートですらないものが大半です。
味に影響が一番でる部分なので、混合オイル、ブレンドオイル等の記載がないものを使用しましょう。
混合されていないシングルエステートであれば、日本で販売されている以上ファインヴァージンではあるはずなのであんまり酷い事にはならないと思います。

他の材料はある程度手を抜いても並べて食べ比べなければ気になるほどの差はでないんじゃないかと思うのですが、1度でもそれなりのエクストラ・バージンで食べた事があれば、名前だけの混合オイルのものは1発でわかるくらい変わると思います。
拘ると青天井に値段があがるので、シングルエステートにしては安い、といったあたりを使うのがおすすめです。

混合オイルは全て質が悪いと言うわけでは無いのですが、生産時に品質を求めて混合している場合は少なく、逆に混合してない場合品質に拘るが故にシングルエステートにしている場合がほとんどなので、色々試して自分で情報収集するのでなければシングルエステートを選ぶのが安心です。

松の実

これもそこそこの品揃えのスーパーや製菓ショップに行けばいくらでも並んで居るように思いますが、実は揃えるのがかなり難しいです。
と、言うのも日本の松は食用に向いておらずほぼ流通していなく、中国産が大半、残りもほぼ韓国産の朝鮮五葉の実が輸入販売されています。
対してイタリアで使われるのはイタリア笠松であり、これは普通のお店ではまず販売していません。
そもそも笠松の実でヨーロッパ産が売られている事は本当に珍しく、カリフォルニア産の物がプロの料理人が仕入れに使うようなルートであれば若干の取り扱いはある、と言った程度ではないかと思います。
いずれにせよ優劣の問題ではなく、入手性のよいアジアの松の実は味も香りも別物なので、グラム単価も安くない松の実を使うのはコストパフォーマンス的にあまりよろしくないのではないかと思います。
そこでどうせ別物と割り切って、代わりに使うナッツとして無塩アーモンドを直前にローストして使う事をおすすめします。
松の実を香りの強い摘み立てに負けない量を使うとかなりの量になってしまうのですが、アーモンドなら相当気前よく使ってもさほど高額になりません。
無加工の物の入手もしやすく、直前にローストして香りを立たせて使えナッツらしい甘みがある上、渋みも薄いのでとても相性がよいです。

他によく使われる代替品として、ピーナッツ、カシューナッツ、ピスタチオ、くるみ等があります。
個人的にはこれらと比べてもコストパフォーマンスまで考えるとアーモンドの圧勝だと思って居るのですが、コスト度外視ならピスタチオもなかなかに面白い風味がでます。
ただ無加工品はあまり見かけないです。

これが値段比率で一番差がわかりにくいと思います。
といっても適当に精製塩を使っても味が落ちない言う事では無く、普通に入手できる岩塩を使えばあまり差は無いと言った程度です。
よっぽど変な物を使うか、こだわって高級なものを使うので無ければ適当でよいかと思います。

サラダや肉料理、天ぷらに使っても美味しいので気合いを入れるならぜひこれを。

ただ、上で書いたとおりジェノベーゼでは値段分ほどの違いは出ないように思います。
未食なら塩の味の出やすい料理で是非一度使ってみて下さい。

ニンニク

さほど高額なものでもないので国産品を。
中国産を使うなら1.5倍入れる位で。
でもやっぱり香りより刺激ばっかり強くなるので国産がおすすめです。

プロの方によれば手に入るなら韓国産の物が香りがさらに強くて良いとの事ですが、近所で手に入らず自分は使った事がありません。

チーズ

これがかなり問題児。
正統なレシピ通り2種類のチーズを使う、というのは結構な高級店でもやってないところも多いそうなので、一点で拘るなら高価ですがパルミジャーノ・レッジャーノを使うのがよろしいんじゃないでしょうか。

そして、問題点。
チーズも品質の良い悪いはともかく、国際的な基準と日本の基準は大分違ってましてチーズの名称が国際的な通り名と全くちがって居ても問題無く販売することができてしまいます。
恐ろしい事に全く同じプロセスチーズが、パッケージだけかえてパルミジャーノとモッツァレラの二つの名前で販売されたりもします。
輸入品で無い場合まず成分的にパルミジャーノ・レッジャーノとは別物なので拘るなら輸入品を。

よくみかける「パルメザンチーズ」表記の粉チーズを入れてる方も多いんじゃ無いかと思うのですが、単純にプロセスチーズを粉状にしてるだけの物が多いです。
そもそもそこらで買えるものは名前が似てるだけでパルミジャーノ・レッジャーノとは縁もゆかりも無いので、割高な粉チーズを使うくらいなら適当なプロセスチーズをちぎって使いましょう。
どっちにしろ本流とは別ものなんで好みの味で安いもので良いと思います。

補足すると本来パルメザンとパルミジャーノは読み方の違いだけで同一品なのですが、パルメザン表記で認定チーズを売っているのはほとんど見た事が無いです。基本国内では粉チーズの呼称になっているようです。

拘りつつ代替レシピをつかうのであれば、パルミジャーノ・レッジャーノより安価なグラナ・パダーノを使うのが良いんじゃ無いかと思います。
この二つは熟成期間に違いがあるのですが製造工程や乳成分の産地はほぼ同じ、源流は同一のチーズから分家したものです。
香りの高い素材だらけでオイル漬け、さらに塩まで足すので正直差し替えても(自分は)違いがわかりません。
パルミジャーノ・レッジャーノは輸入チーズを扱っていれば大抵売ってると言う強みがある位でしょうか。
グラナ・パダーノは粉状に加工されたものはキロ1,500~3,000円くらいで購入できます。

尚、ここまで書いておいてなんですが、今回ソースを作る段階ではチーズは使いません。
理由は次の制作の段落で書かせて頂きます。


代替品まとめ

シングルエステートのエクストラバージンオリーブオイルに無加工のアーモンド、国産のニンニクに適当な岩塩、チーズはお好みのプロセスチーズ、拘るなら輸入のパルミジャーノ・レッジャーノかグラナ・パダーノを使うとぐっと美味しくなります。


制作

ここまでダラダラと長い文章にお付き合い下さった方、ありがとうございます。
いよいよプロシージャです。

今回は500mlの瓶に入りきる程度の分量で。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

まずアーモンドをローストして荒く砕きます。
ビニール袋に入れてティッシュや布巾を当て布にしてハンマーや瓶の底で叩くと簡単に砕けて散らばらず、無駄もでにくいです。
写真は一般的な松の実との置き換え分量ですが、倍位入れると味も香りも強くなってよいかと思います。
アーモンドは渋みが出にくく安いので安心して大量投入できます。

砕いたらフードプロセッサーに投入します。
大理石のすり鉢、所謂マーブル・モルタイオは普通のご家庭にはないかと思いますのでフードプロセッサーを使います。
モルタイオを使う理由は、フードプロセッサーではバジルの葉が切断され、エキスが葉に残り香りが行き渡らないからだそうです。
日本のすり鉢は底に溝があり、結局葉が切断されてしまうので同じ結果になるなら楽なフードプロセッサーを使ってしまいましょう。
モルタイオをお持ちの方は勿論そちらを使った方がよろしいかと思います。
その際は擦ると言うよりはバジルのエキスを絞り出すように潰す感じで。

次にバジルを水で洗い、ペーパータオルに挟んで軽く叩いて水を切ります。
このときバジルをこすったりあまり強く叩いたりしないようにしましょう。
どちらもペーパーに香りがうつり、香りを損なってしまいます。
特にこするのは厳禁です。

大きさによりますが葉っぱは50~100枚程度。

この段階で一度混ぜ合わせます。
ここまでは細かく挽いてしまって問題ありません。

最後に荒く刻んだニンニク2かけら分と塩10g程、オリーブオイル100~150ml程度を入れて混ぜ合わせる程度に軽くフードプロセッサーにかけます。
固形物が浸りきらないようならオリーブオイルを足して下さい。
この段階で挽きすぎるとニンニクの雑味が出るのでほどほどに。

一般的にはニンニクと同時にチーズも投入するのですが、今は無きお茶の水イザベラ・ディ・フェラーラの谷本総料理長によれば

「チーズを入れないとソースが劣化しにくく、チーズを使わない他の料理にもそのままつかえ、チーズは必要な時に掏り立てを使えるのでぐっと便利になる」

との事で教えて頂いて以来ずっとこうしてます。
またこの状態でジップロック等で板状にし、冷凍保存しておくと劣化も少なく1年中楽しむ事が出来ます。

今回はすぐ使うのでさっと煮沸消毒をした瓶に詰めます。
摘み立てを使ってすぐ食べるのは本当に美味しいですが、数日寝かせて味がなじんでからも美味しいです。

こんなふうにオリジナルのラベルなんかを貼るとさらに愛着がわくかもしれません。

ちなみに今回瓶詰めするときオリンピックのニュースを見ながらやったら半分くらいこぼしてしまいました。泣きたい。

少し固めにゆでたスパゲッティーと和え、パルミジャーノ・レッジャーノがないのでレッド・チェダーをちぎって散らしました。
ソースの塩加減は弱めなので、チーズの塩分によってはさらに塩をふります。
今回はスパゲッティーを使いましたが、フェットチーネなどの平打ちのパスタがあればベターかと思います。
チーズはこの段階で削り入れます。

久々に摘み立てのバジルで作ったジェノベーゼは美味しかったー。

ちなみにこのソースは他にも、サラダやカプレーゼは勿論、マリネにしたり、サンドウィッチのソースやバゲットに塗ったり、かわったところではヨーグルトにかけても美味しいです。
こんな感じにチーズをあと入れにする事で各段に用途が広がります。

瓶詰めにした場合、使った後にオリーブオイルを数ミリ分蓋をするようにつぎ足すと劣化しにくいです。

ではよきバジルライフを(キリッ)。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。